バラック小屋みたいな工房で買ったぐい呑 平野雲斉作 ぐい呑


 むかし信楽に遊びに行ったときに、なんだかおんぼろい工房に立ち寄った。そこには、なんかいかにも変人っぽいおじさんがいて、焼き物を作っていた。中も汚く、不思議な空間だった。

 話してみると、もともと焼き物の燃料(まきだったか?)を売っていたらしいが、陶芸家がわずかな原価でなかなかいい値段で作品を売っているのを見て、こっちのほうがだいぶ割がいいと思って転身したとのこと。つまり、世捨て人っぽい風体にもかかわらず、なかなか俗的な感じをぷんぷんと放つ人物だった。

 ところが、人つまり、平野さんの作品はなかなか僕には面白いものだと思えた。今、このぐい呑を見てもその印象は変わらない。むしろ妙にその俗的な部分があったかく、この手捻りのぐい呑にも表れていると思う。また、そんな話の内容を、普通に、しかもかなり本気そうに話しているところが、その人のまあどんくさいところを表しているのだと思う。

 今でもあまり名前を聞くこともないし、おそらく、どうなっているのかもわからない。長く信楽にも行っていないし。でも、こういう陶芸家、芸術家はたくさんいるだろう。でも面白い。名前も忘れそうになることが多いが、こういう人がいたことは忘れそうにない。




週末はコーチの春夏のキャンパストートをもってでかけましょう。