かっこいい。そして色っぽい。山口百恵 GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルコレクション

 ものまねの番組などでいろいろと聴くことの多い山口百恵。僕は小さい頃は芸能人にほとんど興味がなかったのでよく知らなかった。しかも1980年がファイナルコンサートなので、かなり小さい頃に彼女は引退してしまっている。そんな僕でも山口百恵がすごいアイドルだったらしいということはよく知っている。しかも、ほとんど引退後はテレビに出ることもなく、その潔さで、僕の周りの大人たちはみんな彼女のことを良く言う。

 こうなるとやっぱり山口百恵の歌をちゃんと聴いてみないとと突然思い立ち、聞いてみることにした。選んだのはこのCD。ベストとしては集大成的なアルバムだ。目力の強い、ぞくぞくするような色気を放つ彼女の顔がジャケットになっている。

 聴き始めていきなりがっかり。最初のほうの曲が、時代の流れもあるのかもしれないがあまりにもつまらない。たしかに、青い果実とか、ひと夏の経験とか、昔なら相当大胆な曲だったのかもしれないなとは思うが、今だとネタにしかならない。しかも、彼女の歌い声にまったく魅力がないのだ。中途半端なセクシャルさと男に媚びた歌詞、そしてへたくそなアイドルの歌。この三拍子がそろっていて、これがなぜスーパーアイドル山口百恵を生み出したのかとさえ思った。

 ところが。そういう聴くのがつらい時期がしばらく続いた後、突然転機が起こる。「赤い運命」という曲あたりから、彼女の歌声が一変する。テレビとかでも聴いたことのある、やや太くそして妖艶な「山口百恵」の声で、ちょっと投げやりな感じともいえる雰囲気が曲からあふれ出る。これは本当に同一人物だろうか、と思いたくなるくらいの変身ぶり。そしてその深く、独特の雰囲気に完全に僕は引き込まれた。

 それからはもう名曲のオンパレード。もちろん曲自体もかっこいい曲が多いのだが、それ以上に山口百恵の歌の魅力が大きい。イミテイション・ゴールドやプレイバックpart2、いい日旅立ちなど、なんというか、いい曲だというだけではなく、心の奥底の官能的な部分がくすぐられるようだ。なるほど、これが山口百恵か。これはコレクションアイテムに加えたいと思ったアルバムだ。

(5点満点)
★★★★★

山口百恵以外には、浜田省吾もおすすめ。