力強い美声ではあるが・・・ 坂本冬美 Love Songs 〜また君に恋してる〜

【送料無料】Love Songs 〜また君に恋してる〜

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このアルバムはかなりいい評価を受けているようだが、僕個人としてはいまいち。確かに歌は抜群にうまいと思うし、声もいいのだが、演歌臭さがどうしても抜けない。合う曲はいいのだけれども、割とそうではない曲を選んでいるような気がする。名曲だらけだけに、はずすとつらい。


1.また君に恋してる
 オリジナルはビリー・バンバン。焼酎「いいちこ」のCM曲。坂本冬美が歌うと多少演歌っぽくなるが、それも悪くない。時間の流れの中での恋心を描く歌詞は情感たっぷり。そう、季節は巡る。


2.恋しくて
 オリジナルはBEGIN。BEGINの記念すべき1stシングル。別れた相手への切ない未練心が唄われている。ちょっとレトロな調べがセピアな情景を描く。切ない歌のわりに、ちょっと坂本冬美バージョンはそれが十分に出ていないのが残念。


3 あの日にかえりたい
 オリジナルは荒井由美。これもオリジナルとかなり雰囲気が変わっている。荒井由美の場合、感情をむしろ抑えて、淡々と歌うことで切ないながらもちょっとおしゃれな雰囲気を醸し出し、それがまたバックの音楽と見事に調和しているが、坂本冬美版は、そのおしゃれな演奏はそのままに、どうも一気に女性の年齢が上がってしまった気がする。なんというか重たい女性の歌になってしまい、どうも共感できない。


4.会いたい
 沢田知可子の名曲。最初聞いたときは、三曲目の「あの日に会いたい」よりもいいのではないかと思ったが、さびの直前からさびにかけてがいまいち。やっぱり演歌になってしまうのだ。ここで演歌というのは、別に演歌が悪いという意味ではない。演歌というのは、「生き方が演歌」という言葉などもあるように、自分の生き方を演歌というものにあてはめてしまうようなところがあり、意識が自分へと向いてしまうところがある。どういうことかといえば、素直に相手を想い、その死を悲しんでいるというよりも、その悲しんでいる自分に酔っている女性のように見えてしまうのだ。というわけでちょっと残念。


5.言葉にできない
 オリジナルはオフコース。これは完全にミスマッチだと思う。演歌向けの歌ではないということだ。歌詞自体は男性でも女性でもどっちでもとることができるように思えるが、やはりこれは男性の心をうたった歌だと思う。坂本冬美バージョンを聞いてそう思った。


6.恋
 言わずと知れた松山千春の名曲。これはなかなかいいと思う。もともと演歌っぽいと言えなくもない歌だということもあるがそれだけではなくて、演歌歌手独特の歌い方がやや抑制されて比較的に自然に歌われているのが功を奏している。坂本冬美は歌はうまいし、美声なので、こういう男目線の女性像の歌はいい。いい女性だなと思える想像ができる。


7.夏をあきらめて
 オリジナルはサザンオールスターズ。もともとは感情を抑え気味にたんたんの歌う桑田佳祐が哀愁をさそう曲だが、この坂本冬美版は、大きく曲調からアレンジして、むしろ昭和のレトロな曲調にすることで成功している。最初はあまり期待していなかったが、意外と面白いのでびっくりした。坂本冬美のこってりとした歌い方がうまく生かされていると思う。情感はなくなったがこれはこれでいい。


8.シルエットロマンス
 オリジナルは大橋純子。とはいえ、オリジナルを聞いたことがなかったので、YouTubeで聞いて比較してみた。なるほど、オリジナルは力強くややハスキー気味の声がいい雰囲気を出している。坂本冬美版はもちろんそういうのではないが、それほど見劣りする感じでもない。まあ、これは僕がオリジナルを聞きなれた世代ではないからかもしれないが、坂本版もいいとは思う。ただ、もともとちょっとあまり好きな曲ではない。


9.片想い
 オリジナルは浜田省吾。完全にミスチョイス。


10.なごり雪
 もとのノスタルジックあふれる曲から比べると、かなり豪華な曲になっている。白黒テレビがデジタルハイビジョンになったよう。そのため最初曲が流れはじめたときはかなり違和感があったが、始まってみるとなかなかよかった。音の豊富なバックだが坂本冬美がやや感情をきっちりと抑えめに歌うことで成功したのだと思う。


11.時の過ぎゆくままに
 オリジナルは沢田研二。歌詞の雰囲気が演歌っぽいので、これはそれほど違和感がない。ただしそう感じるもうひとつの理由は、僕が元の曲をそれほど知らないからだということもある。いい歌詞だ。生きることにつかれた二人の愛し合う男女が互いを慰めあう雰囲気の歌だろうか。悲しい歌だ。


12.大阪で生まれた女
 オリジナルはBORO。これはいまいち。オリジナルのBOROのあのしゃがれた声があまりにもインパクトがあるせいだろうか。あの歌声こそが、この歌で歌われている疲れた女性の雰囲気を最大限に醸し出しているのだろう。この女性は決していいところの女性ではない(はずだ)。でも坂本冬美が歌うとちょっと品のいい女性になってしまう。それはこの歌詞には合わない。


13.また君に恋してる(デュエットバージョン)
 オリジナルの歌手との共演という実に思い切った曲。これを聞くとますますオリジナルのビリー・バンバンのうまさを感じるが、デュエットにすることによってメリハリがつくので楽しい。対極にいるような歌い方の違いが面白い。


坂本冬美/Love Songs 〜また君に恋してる〜