森山徹 『ダンゴムシに心はあるのか』

【送料無料】ダンゴムシに心はあるのか

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 ダンゴムシを中心に研究を行う生物学者が「心」の問題に迫る本。20世紀以降支配的な自然主義的なアプローチである。これまでなぜ「心とは何か」という問題が解決されていないのかということに疑問を持った著者が、それに答えを与えようとしている。確かに著者による団ゴムの研究報告は、ダンゴムシの生態を知るのにとても有益であり、興味深いものではあるが、残念ながら、著者の一番の目的はこの本では果たせていない。

 著者のアプローチの大枠は、まず心がどういうものであるのかということを定義し、そのうえで、それがダンゴムシにも当てはまることを示すものである。著者は、心を定義する際、常識的な心についての概念のうちから一部を取り出してその科学的定義を試みる。しかし、このアプローチ自体に問題がある。そもそも心とがどういうものであるのかは、時代や文化的背景のもとで錯綜しており、しばしばコンフリクトした内容を持つ。だからこそ、心の問題はこれまで解決していないのだ。その中から恣意的にあるものを採用したとしても、それと合わない心の定義をなぜ採用するべきではないのかということを論じつくすことができなければ、その議論は明らかな循環論法に陥る。ダンゴムシが心を持つのかどうかということは、筆者がある一部の心についての概念を採用した時点で答えが出てしまう、つまり出来レースなのだ。
 さらに筆者が明らかにしたダンゴムシの生態は、心という言葉を使わなくても記述できるものばかりである。

 ここに自然主義的なアプローチの限界がある。私は自然主義にシンパシーを持ってはいるが、その限界を無視することはできない。


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